1.遺言書の作成(目次)
1.遺言書作成のすすめ
2.自筆証書遺言の例
3.遺言書の種類
3-1. 自筆証書遺言
3-2. 公正証書遺言
3-2-1.公正証書遺言の特徴
3-2-2.公正証書遺言作成の必要書類
3-2-3.公正証書遺言作成の費用
4.法的に有効な遺言書とは
遺言書の作成について、下記リンク先の高島司法書士事務所ウェブサイトで、さらに充実した情報がご覧いただけます。
1.遺言書作成のすすめ
近年は遺言書を作成する方が増えています。遺言書を作成しておくことで、残された家族や大切な人に大変な思いをさせずに済むからです。
それでも、
「遺言書は年を取ってから書くもの」
「遺言書は財産をたくさん持っている人が書くもの」
という認識を持ってらっしゃる方も多いようですが、遺言書を書くのに早すぎることなど決してありません。
また、遺産がたくさんある方より、遺産は「マイホームと多少の預金のみ」というような場合の方が、遺産分割を巡ってのトラブルが多いとの統計もあります。
遺言書は、紙とペンさえあれば自分一人で作成できます。けれども、法律に定められたとおりに作成しないと、法的に有効な遺言書になりません。
2.自筆証書遺言の例
遺言書を書く場合、通常は、自分1人で作成できる自筆証書遺言か、公証役場で作成する公正証書遺言のどちらかを選ぶことになるでしょう。
当事務所では、公正証書遺言の作成をお勧めしておりますが、はじめに、最も簡単に作成できる自筆証書遺言作成の基本について解説します。
まず、次の4点を必ず守らないと遺言全体が無効になるので気を付けましょう。また、一部でも間違えた場合は書き直すようにします。その他の注意事項は遺言書作成例をご覧ください。
自筆証書遺言で必ず守ること
1.全文を自筆にする
2.正確な作成日を書く
3.戸籍通りの正しい氏名を書く
4.印鑑を押す
遺言書を書き終わったら、封筒に入れて、遺言書に押したのと同じ印鑑(通常は実印)を押して封印します。封筒には遺言書の作成日も書いておきます。
遺言書
遺言者○○○○は、次のとおり遺言する。
1.遺言者は、妻○○○○(昭和○○年○○月○○日生)(注1)に、次の不動産を
相続(注2)させる。
(1)土地(注3)
所在 松戸市松戸
地番 1176番地
地目 宅地
地積 100㎡
(2)家屋
所在 松戸市松戸1176番地
家屋番号 1176番
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 75㎡ 2階 50㎡
2.遺言者は、長男○○○○(昭和○○年○○月○○日生)に、○○銀行○○支店
(口座番号0000000)の遺言者名義の預金債権の全て(注4)を相続させる。
3.遺言者は、本遺言に記載のないその他財産の一切を妻○○○○に相続
させる。(注5)
4.本遺言の執行者として妻○○○○を指定する。(注6)
5.(付言事項)(注7)
もしものときを考えて、この遺言書を書きました。家族みんなが幸せで
いることを心から願っています。
平成○○年○○月○○日(注8)
千葉県松戸市松戸1176番地2
遺言者 ○○ ○○ (印)(注9)
注意事項
- 人を確実に特定できるよう、続柄、氏名、生年月日を入れます。法定相続人以外の場合は、住所も書いておきます。
- 法定相続人に対しては「相続させる」、それ以外の人に対しては「遺贈する」と書きます。「与える」「譲る」「あげる」のような曖昧な言葉は避けましょう
- 不動産は登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに記載します。とくにマンションの場合、登記事項証明書に記載されている事項が膨大な量の場合があります。そのような場合でも、当然、自筆でなければなりませんが、記載を省略できる項目もあるので、詳しくはお問い合わせください。
- 銀行名、支店名、口座番号、名義人など預金口座を特定できるように書きます。金額は変動しますから書く必要はありません。
- 遺言書に書かれていない財産をどうするかも指定しておけば安心です。
- 遺言執行者を指定しておくとスムーズに手続をすることができます。弁護士や司法書士を遺言執行者に指定することもできます。
- 付言事項には法的な拘束力はありませんが、遺言者の意思としてメッセージを入れておくことができます。
- 作成した正確な日付を書きます。平成○年○月吉日のような曖昧な書き方では駄目です。
- 戸籍に記載されているとおりの正しい氏名を書き、押印します。印鑑は実印を使った方が安心です。
3.遺言書の種類
遺言にはいくつかの方法がありますが、通常は自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれかを選択することになるでしょう。
3-1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者自身が1人で作成できますから費用はかかりませんし、他人に遺言の内容を知られることもありません。
ただし、遺言書は法律に定められたとおりに作成しなけければならず、少しでも間違いがあるとその効力が認められません。したがって、少しでも不安があれば、専門家にご相談されたうえで作成するのが確実です。
自筆証書遺言のメリットは、費用をかけずに1人で作成できるため、気軽に作成し直せることにあります。よって、若いうちに作成し、生活状況が変わったらまた書き直すような場合に適していると言えます。
また、自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での遺言書検認手続を受けなければならず、さらに、保管している間に紛失してしまうことの無いように注意が必要です。
3-2. 公正証書遺言
3-2-1.公正証書遺言の特徴
公正証書遺言は公証人によって作成されるので、法律的に有効な遺言を間違いなくすることができます。作成した遺言書の原本は公証役場で保管されますから、改ざん・紛失の心配がありません。また、自筆証書遺言では必ずしなければならない、家庭裁判所による検認手続が不要なので、相続人の負担が軽減されます。
公正証書遺言を作成するには、遺言者が、公証人の面前で、証人2人以上(未成年者、推定相続人、受遺者等は証人になれません)を立会人として、遺言内容を口述します。公証人は遺言者が口頭で述べた遺言の内容を正確に文章化し、それに遺言者、証人、公証人が署名押印すれば公正証書遺言が完成します。
なお、司法書士にご依頼いただいた場合は、司法書士が公証人との間で、遺言書の内容についての打ち合わせを事前に行いますから、公証役場での手続が簡単に済みます。また、通常は遺言者が公証人のいる公証役場へ出向きますが、病気等の事情により出向けない場合、公証人に病院や老人ホーム等に出張してもらうことも可能です。
3-2-2.公正証書遺言作成の必要書類
公正証書遺言を作成するには、通常次のような書類が必要となります。
- 遺言者の印鑑証明書
- 遺言者の戸籍謄本
- 遺言者の住民票写し(本籍・続柄の記載のあるもの)
- 財産をもらう人が相続人の場合は、その人の戸籍謄本(遺言者との相続関係が分かるような戸籍、除籍、改正原戸籍の謄本)
- 財産をもらう人が相続人以外の場合は、その人の住民票写し
- 遺言する財産が土地・建物の場合は、その登記事項証明書(登記簿謄本)、および固定資産評価証明書
- 証人の住民票写し
3-2-3.公正証書遺言作成の費用
公正証書遺言を作成するための公証人手数料は、遺言により相続(遺贈)する財産の価額、また、相続(遺贈)させる相続人(受遺者)の数などにより計算しますが、例としては次のようになります。また、この他に正本・謄本の作成費用(1枚につき250円)、及び公証人の出張が必要な場合は日当・旅費がかかります。
相続財産の価額 | 相続させる相続人 | 公証人手数料 |
---|---|---|
5,000万円 | 配偶者(妻・夫)のみ | 40,000円 |
5,000万円 | 配偶者3,000万円、子2,000万円 | 57,000円 |
8,000万円 | 配偶者(妻・夫)のみ | 54,000円 |
8,000万円 | 配偶者6,000万円、子2,000万円 | 77,000円 |
公証人手数料の計算方法については、日本公証人連合会の手数料(公正証書作成等に要する費用)のページをご覧ください。
4.法的に有効な遺言書とは
遺言とは、遺言者(被相続人)の最終の意思を表すもので、遺言者自身がその遺産の処分方法を定めることにより、相続を巡る無用な争いを防止するために行うものです。
遺言をするためには遺言書を作成します。遺言書の作成方法は法律(民法)で定められていますから、法律的に有効な遺言をするには、民法の定めに従って遺言書を作成しなければなりません。
また、遺言書に書けば何でも法律的に有効なわけではなく、遺言によってできることについても法律で定められています。たとえば、法的な効力をもつ遺言内容としては、法定相続分と異なる相続分を定めたり、財産を相続人以外の第三者に遺贈する場合などがあります。
なお、遺言書には法律で定められた事柄以外に、自分の葬儀の方法についての希望や、残された家族にへの要望などを書くことももちろん可能ですが、それらはあくまでも希望であり、相続人に対して強制力を持つものではありません。