遺産分割協議書に捨て印(訂正印)は必要か
遺産分割協議書へは、署名の後ろに実印で押印しますが、さらに用紙上部などの欄外に捨て印を押すことがあります。捨て印があれば、遺産分割協議書の内容に軽微な誤りがあった場合に訂正印とすることが可能だからです。
つまり、遺産分割協議書を作成し、相続人全員による署名押印が完了した後に間違いを発見した場合、本来であれば、間違いを修正したうえで相続人全員が訂正印を押すことになります。それが、事前に捨て印を押してあれば、その捨て印を訂正印の代わりにすることで、遺産分割協議書の訂正が可能だということです。
したがって、相続人の全員が同居していて、作成し直した遺産分割協議書へすぐに印鑑を押せるような場合には、捨て印は無くても構わないでしょう。けれども、相続人全員から何度も印鑑をもらうのが大変なのであれば、捨て印を押しておくほうが便利だといえます。
なお、捨て印を押してしまうと、勝手に遺産分割協議書の内容を書き換えられてしまうことを心配される方もいらっしゃるでしょう。たしかに、捨て印を使うことで、その書類の内容をどこまで変更できるかについては明確な規定はありません。
しかし、捨て印により訂正できるのは、住所、不動産の表示などについての些細な誤りに限られると考えるべきであり、たとえば、氏名を書き換えることで、別人に遺産を引き継がせるようなことは許されません。
ただし、そのような訂正をした遺産分割協議書であっても、書類の形式的に不備がなければ、不動産相続登記が受け付けられてしまう可能性はあります。そのような場合は、後からその遺産分割協議書が無効であるとの主張をすることになります。