不動産相続登記をする際には、遺産分割協議書の添付が必要となることが多いですが、次のケースについては、相続登記をするにあたって遺産分割協議書の作成が不要です。

1.遺言書がある場合

法律的に有効な遺言書があり、その遺言書によって誰が不動産を引き継ぐかが指定されている場合、相続人による遺産分割協議を行う必要はありません。したがって、相続登記をする際にも、遺産分割協議書の添付は不要です。

2.法定相続人が1名のみである場合

法定相続人が1名のみであれば、その相続人が全ての遺産を相続することになります。したがって、「遺産を分割する」ことはありませんから、遺産分割協議書も不要です。

この「法定相続人が1名のみである場合」には、法定相続人のうちの一人だけを残して、他の法定相続人全員が相続放棄をした場合も当てはまります。相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとみなされますから、遺産分割協議に参加することも無いのです。

3.法定相続分での登記をする場合

法定相続人が複数で、かつ、遺言書が無い場合でも、法定相続分のとおりに共有名義で相続登記する場合には、遺産分割協議書が不要です。

たとえば、法定相続人が配偶者(妻)と2人の子(長男、長女)だったならば、法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1です。そして、被相続人が所有していた不動産を上記法定相続分のとおりに共有名義で登記する際には、相続人の誰にとっても不利益は無いことになるので、遺産分割協議書は不要だということです。

ただし、共有名義で登記した場合には、後になって、その不動産を処分(売却)したり、金銭の借入れに伴う担保権(抵当権・根抵当権)の設定をするには、共有名義人の全員で手続をする必要があります。よって、手続が簡単だからといって共有名義で登記してしまうと、後の負担が大きくなることもあるので注意が必要です。

なお、この場合、法定相続人の1人から、独で相続登記の申請をすることも可能です。つまり、遺産分割協議が整っていない状態であっても、法定相続分通りの共有名義に相続登記をすることが可能なのです。しかし、そのようなことをする必要性があるケースはほとんど考えられませんし、問題が生じることもありますのでお勧めできません。詳しくは、単独申請による共有名義での相続登記をお読みください。