注意事項(このページについて)

このページには相続登記に関連する先例や質疑応答を掲載していますが、司法書士高島一寛が実務に使用するために作成しているものであるため、必要な箇所のみ抜粋したり要約している箇所もあります。参考にしていただくのは差し支えありませんが、誤りなどがあっても当事務所では一切の責任を負いかねます。また、このページに記載されていることについての質問等は受け付けておりません

(最終更新日:2022/2/17)

遺産分割協議書には相続人全員が署名及び実印による押印をし、その相続人全員の印鑑証明書を添付するのが原則ですが、登記申請人(遺産の分割を受ける人)の印鑑証明書は不要であるとの見解もあります。

実際の登記実務においても、少なくとも1人の相続人が単独で不動産を取得する場合においては、申請人となる相続人の印鑑証明書を添付しなくとも、その相続登記の申請は問題なく受理されるものと思われます。ただし、そのような取扱いを認めるべきでないとの見解もあるので注意が必要です。

遺産分割協議書への押印等について

遺産分割協議書への、遺産の分割を受ける者の押印について、次の質疑応答があります。

相続人A、B、Cの全員が不動産を特定して、これが物件をAが承継取得する旨の遺産分割協議書を作成し、B、Cは印鑑証明書付き実印を押印しているが、Aは認印で印鑑証明書の添付がない場合でも、遺産分割による相続登記申請書に添付する遺産分割協議書となる(登研429号121頁)。

なお、上記の取扱いについて、登記官からみた相続登記のポイント(新日本法規)415ページに、「実務上、これによって処理される例も見られますが、疑問があるところです」というような記載もあります。

ただし、上記より古い質疑応答でも、登記申請人以外の者の印鑑証明書で足りるとしているものが存在します(登研141号46頁)。

問 遺産分割協議書を添付して相続による所有権移転登記を申請する場合、右の協議書に添付すべき印鑑証明書について左の2説あり。いずれを相当とするか。
 甲説 協議者全員の印鑑証明書を要す。
 乙説 登記申請人以外の者の印鑑証明書で足りる。
答 乙説を相当と考えます。

また、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書について下記の先例もありますが、遺産分割協議者の印鑑証明書の提出を要するとあるだけなので、登記申請人の印鑑証明書が不要であることの根拠にはならないと考えます。

昭和30年4月23日民事甲742
印鑑証明書の要否について
(イ)遺産分割協議書を添附して、相続による所有権移転登記の申請があった場合に、その遺産分割協議者の印鑑証明書の提出を要する。
(ロ)共同相続人甲、乙のところ、乙が民法第903条第2項により相続分がない旨の証明書を添附して、甲より相続による所有権移転登記の申請があった場合に、乙の印鑑証明書の提出を要する。
(ハ)右(イ)(ロ)とも、その印鑑証明書を提出しないときは、不動産登記法第49条第8号により却下の原因となる。

不動産登記法第49条(昭和42年法律第36号)
登記官は左の場合に限り理由を附したる決定を以て申請を却下することを要す。但し、申請の欠缺が補正をすることを得べきものなる場合において申請人が即日にこれを補正したるときはこの限りにあらず。
(1~7 省略)
8 登記申請書に必要なる書面または図面を添付せざるとき
※旧不動産登記法49条8号は現在の不動産登記法25条9号に変更された

共同相続の登記後に遺産分割協議により単独申請する場合についての先例

昭和28年8月10日民事甲1392
相続人により数人のため既に共同相続の登記がなされている物件につき遺産分割協議書による所有権移転登記の申請は、不動産登記法第26条によるのを相当とする。

不動産登記法第26条(明治32年法律第24号)
登記は登記権利者及び登記義務者またはその代理人登記所に出頭してこれを申請することを要す。

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