相続登記の必要書類としての遺産分割協議書には、相続人全員が署名、および実印による押印をして印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書の有効期限にはとくに決まりがありません。

たとえば、不動産の売買や贈与を原因とする所有権移転登記の必要書類としての印鑑証明書は、発行後3ヶ月以内のものでなければなりません。しかし、相続登記においてはそのような有効期限がないのです。

ただし、被相続人名義の銀行預金の解約手続き(名義変更手続き)には、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書が必要になるはずですし、司法書士へ相続登記をご依頼くださった際には、相続人全員に新たに印鑑証明書をお取りいただくのが原則です。

相続登記をすべき不動産が全国各地に複数ある場合や、銀行預金の解約手続きを先に行っているうちに、印鑑証明書の発行日から3ヶ月間が経過してしまうことも考えられます。

そのような場合に、再び印鑑証明書を提出してもらわなければならないのであれば、苦労して合意に漕ぎ着けた遺産分割協議が台無しになってしまうかも知れません。

そこで、遺産分割協議による相続登記は、必ずしも3ヶ月以内に行えるとは限らないことから、有効期限が無いものとされているのでしょう。つまり、何年も前に取ってあった印鑑証明書でも構わないということではありません。

実印と印鑑証明書の関係について

実印とは、市区町村役場で印鑑登録をした印鑑のことです。よって、印鑑登録をしさえすれば、100円ショップで購入した印鑑であっても実印になるわけです(そのような印鑑では極めて簡単に偽造ができてしまうので、実印にするのはお勧めしませんが)。

ある印鑑が実印であるかを判別するためには、印鑑証明書が必要です。したがって、遺産分割協議書に限らず何の書類へ実印で押印しても、印鑑証明書が付いていなかったとすれば意味がありません。

いくら実印を押してあると言っても、印鑑証明書が無ければ、それが実印であることを証明できないからです。立派な印鑑だから実印なのでは無く、印鑑証明書が付いているから実印なのです。

したがって、契約書などへ実印を押したときも、印鑑証明書を差し入れることによって、はじめて証拠としての信頼性を確保できるのです。もし、印鑑証明書が無ければ、押されている印鑑が実印なのかも判断できませんし、後でその書類の成立を否定されてしまう危険もあるのです。

実印は印鑑証明書と一緒になってこそ意味があるのだと、良く覚えておきましょう。