不動産を所有されている方が亡くなられた場合に、その所有者名義を相続人に変更するのが相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)です。相続による名義変更登記(名変)などと俗に言われることもあります。

この相続登記は、相続の開始(被相続人の死亡)から何ヶ月以内にしなければならないという決まりはありません。そこで、先祖代々受け継がれているような土地の場合には、何十年も前になくなった祖父名義のままになっているようなケースも決して珍しくありません。

実際、それですぐに不都合が生じることはないかもしれませんが、いざ名義変更(相続登記)をしようというときになって大変な困難に直面することがあります。とくに問題になるのが、時の経過と共に数次相続の発生により相続人の数が増えてしまっている場合です。

たとえば、被相続Aさんの子供Bさんが、父(Aさん)の遺産についての分割協議が済む前に亡くなったとします。この場合、Aさんの遺産を相続する権利を、Bさんの相続人が引き継ぎます。下の図のようにBさんに妻Cと子DEがいたとすれば、Aさんの遺産についての分割協議に、その妻子であるCDEも参加することになるのです。

この数次相続は、何代前の相続についてであっても権利が失われることはありません。そのため、早いうちに遺産分割協議および相続登記をしておかないと、被相続人の孫やひ孫が相続人として遺産分割協議にすることもあります。相続人が大勢いて互いに面識のないような状況になってしまうと、遺産分割協議を成立させるのは困難です。

このような数次相続が生じることはなくとも、相続開始から時間が経てば、相続登記をするのに必要な除住民票(戸籍附票)、その他の書類が取得できなることもあります。役所で発行される書類が手に入らないからといって、相続登記が不可能になることはありませんが、手間や費用が余計にかかることにもなります。

遺産相続に関するご相談を多数いただき、様々なトラブルを目の当たりにしてきた司法書士として、相続登記はできるだけ速やかに行うことを強くお勧めするものです。