不動産を所有されている方についての相続が開始したときには、相続人、受遺者の方への所有権移転登記(名義変更登記)を行います。このうち、配偶者、子、親、兄弟姉妹といった、法定相続人への所有権移転登記を行うことを「相続登記」といいます。

相続登記は法務局で行いますが、代理人を立てずとも、相続人ご本人が申請人として登記手続きをすることも認められています。しかし、不動産は多くの方にとって、所有する財産の中で最も高額なものです。そのため、間違った登記がされることの無いよう、厳格な手続きが必要となるのです。

相続登記の難易度は個々のケースによって全く異なってきます。たとえば、法定相続人が配偶者と子供である場合は比較的容易なことが多いと言えます。このようなときは、インターネット上の情報や、法務局へ相談に行くことにより自分で手続きを行うことも可能かも知れません。

ただし、だからといって相続登記は自分でできるということにはなりません。登記のプロである司法書士であっても、相続登記をする際には大変な苦労をすることも多いです。そいうったケースでは、相続人の方が自分で登記手続きを行うのは不可能だといって良いでしょう。

たとえば、遺産分割協議による相続登記の場合でいえば、次のようなことを証明する必要があります。

1.被相続人(亡くなられた方)が、本当にその不動産の所有者であったこと。

除住民票に記載されている被相続人の最後の住所と、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている所有者の住所が一致していれば、被相続人が不動産の所有者であることが証明できます。もしも、相違していれば、そのつながりが分かる(除)住民票、戸籍附票などが必要となります。

2.遺産分割協議に参加しているのが、本当に法定相続人の全員であること。

法定相続人が被相続人の配偶者と子の場合であれば、被相続人が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)を取ります。これによって、婚外子(非嫡出子、隠し子)や、前妻との子などを含めた法定相続人の全員が判明します。

また、法定相続人が、被相続人の兄弟姉妹や、甥姪となる場合には、更に多くの戸籍謄本等が必要となります。

3.遺産分割協議の結果に、法定相続人の全員が同意していること。

遺産分割協議書に法定相続人の全員が署名押印し印鑑証明書を添付することで、遺産分割協議の結果に同意していることの証明となります。ただし、その前提として、遺産分割協議書の記載内容に誤りが無いことが求められます。たとえば、不動産の表示が不明確であれば、相続登記を行うことが出来ないかも知れません。

司法書士は上記のような事柄を一つ一つ確認して、確実に相続登記を行えるようにしています。登記についての専門知識が無い方が手続きを行う場合でも、たまたまうまく行くこともあるかもしれません。よって、いくら時間と手間をかけても構わないのであれば、まずはご自分で手続きをしてみても良いでしょう。

ただし、相続人が複数いて何度も手続きに協力してもらうのが難しいような場合には、最初から、司法書士に手続きを依頼するべきでしょう。繰り返しになりますが、たまたま自分で相続登記が出来た人がいるからといって、どんな場合でも自分で出来ることにはなりません。

また、ご依頼者の代理人として登記手続きをすることが出来るのは、司法書士と弁護士のみです(ただし、登記を主要業務として行っている弁護士は皆無だと思われます)。よって、相続登記の手続きを依頼べき専門家は、司法書士に限られるといえます。その他の、専門家と自称する方々が遺産相続手続きの業務を行っている場合、何を依頼することができるのかを確認してください。

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