相続人は、被相続人の遺産を相続するのと同時に、負債(債務)についても引き継ぎます。もし、被相続人に借金があったとしても、遺産の方が債務(借金)より多ければ、遺産を処分することで債務の支払に充てれば問題無いでしょう。しかし、遺産よりも債務の方が多かった場合、法定相続人がその債務を必ず支払わなければならないとすれば、たとえば、生まれたばかりの子供が多額の債務を背負うことにもなりかねません。

そんなとき、被相続人が抱えていた債務の支払義務から解放されるために、家庭裁判所で相続放棄申述の手続きがありますが、相続人が未成年者である場合には、自分で相続放棄の申述手続をすることはできません。なぜなら、相続放棄をすれば、被相続人の債務(マイナスの財産)だけでなく、一切の遺産(プラスの財産)も引き継がなくなるのであり、そのような財産に関しての重要行為を未成年者が自分自身で行うことは認められていないのです。

未成年者の特別代理人が必要な場合

そのため、未成年者が相続放棄の申述手続をする際には、親権者が法定代理人として家庭裁判所に申立てをすることになるのですが、親権者と未成年者の関係によっては、親権者が法定代理人になれないことがあります。つまり、未成年者と親権者との間に利害が対立する(利益相反行為となる)場合であり、具体的には次のようなケースです。

  1. 親権者と、その親権に服する未成年者とが共同相続人であって、未成年者のみが相続放棄申述をする場合(親権者が先に相続放棄をしている場合を除く)。
  2. 複数の未成年者の親権者が、一部の未成年者のみを代理して相続放棄申述をする場合

1の場合には、子だけに相続放棄させることで、親権者である親が遺産を独占してしまう恐れがあります。また、2の場合では、一部の子だけが遺産相続をして、相続放棄をした子が不利益を被る恐れがあります。

このような場合に、親権者が、その親権に服する未成年者の相続放棄手続を代理するのは、利益相反行為となるため許されません。そこで、未成年者のための特別代理人の選任を家庭裁判所に請求し、特別代理人が未成年者に代わって相続放棄申述の手続をするのです。

特別代理人の選任手続について詳しくは、千葉県松戸市の高島司法書士事務所ホームページの「特別代理人選任」をご覧ください。また、ご不明な点があれば、松戸の高島司法書士事務所までお気軽にお問い合わせください。