亡くなられたご家族の借金についてのご相談がありました。亡くなったのは相談者の夫で、法定相続人は妻および二人の子供です。

債務の内容は、住宅ローン、銀行からの事業資金の借入れ、クレジットカードによるキャッシング。

住宅ローンの残債務は数百万円までに減っているのですが、銀行からの借入債務がそれをはるかに上回る金額なので、住宅を処分したとしても多額の債務が残ることになります。

また、上記債務のうち、銀行からの借入れについて、被相続人の妻が連帯保証人になっているのです。

借り主が法人(会社)で無い場合には、主債務者以外に個人の連帯保証人が付いていることが珍しくありません。

まず、二人の子供については相続放棄をする他に選択肢はないでしょう。

家庭裁判所で相続放棄申述が受理されれば、相続放棄をした人については最初から相続人でなかったことになりますから、父の債務支払の義務の一切から逃れることができます。

それでは、妻についてはどうすれば良いでしょう。

残された妻の収入により、銀行借入の保証債務を支払っていくことは不可能ですので、最終的には自己破産することで債務整理することになるのは間違いないと思われます。

自己破産をするのであれば、保証債務の支払義務だけでなく、相続人としての相続債務についての支払についても免責されるわけですから、相続放棄をすることにあまり意味がないようにも思えます。

しかし、本件については、相続放棄をした上で、後から必要に応じて自己破産申立をするのがベストだと考えています。

まずは、相続放棄をしない場合には、被相続人の債務を全て妻が相続することになりますから、夫が抱えていた債務の全てを調査、把握した上で自己破産申立をする必要があります。

仮に、自己破産をした際に、債権者一覧表に載せていなかった債権者があったとしても、知っていながら除外したというような場合でなければ免責の効果は及ぶと思われます。それでも、将来的に突然、請求を受ける不安は残ります。

また、住民税や所得税などの税金を滞納していた場合、相続人はその納税義務も相続することになります。

もちろん、相続放棄をすれば納税義務からも逃れられるわけですが、ここで問題なのは自己破産をした場合には納税義務については免責されないということです(非免責債権)。

税金などの非免責債権の有無についても調査をした上で、相続放棄をせずに、自己破産のみで処理をするということも考えられなくはありません。

その方が、被相続人の持っていた財産の一部でも引き継ぐことができるかもしれません。また、相続放棄をするのであれば、被相続人が所有していた不動産(土地、家屋)からは直ちに退去すべきだ考えられます。

相続放棄をする以上は、そこに済む権利も無いからです。これに対して、自己破産のみをするのであれば、競売手続が行われるまでの間はそこに住み続けることは可能です。

しかし、そのようなメリットを考慮した上でも、相続人の精神的負担を考えると、相続放棄をしてしまうことで相続人としての債務支払義務だけでも無くしてしまうのが良いと考えたわけです。

本件のような場合には慎重な判断が求められますので、まずは司法書士などの法律専門家に早急にご相談されることをお勧めします。

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