2011年12月21日付 朝日新聞ウェブサイトから引用です。
敷金返還、業者が無資格で家主と交渉か 名古屋地検捜査
賃貸住宅の敷金返還をめぐるトラブルが増えるなか、家主との返還交渉を弁護士以外の業者が請け負うケースが増えている。名古屋市内の業者がインターネットで客を募り、報酬を受け取っていたとして、名古屋地検特捜部は弁護士法違反(非弁活動)の疑いで捜査している。
業者のホームページには、「経験豊かなスタッフが敷金返還のサポートをいたします」とあります。料金システムは「初期費用不要 成功報酬のみ」とあり、戻ってきた金額の15%(2LDKの場合)が成功報酬で、返還がない場合「料金はいただきません」とのこと。
この料金で退去時の立ち会いと、敷金返還請求の交渉までするとのこと。敷金は家賃の2ヶ月程度が通常であり、かつ、その全額がいつも返還されるわけではないですから、とてもビジネスとして成立するとは思えません。
それなのに、違法と判断される可能性が極めて高いビジネスを、ホームページで派手に宣伝しているのは一体どういうことなのだろうと考えてしまいます。実際には氷山の一角なのかな?
認定司法書士も、敷金返還請求の交渉ができます
最後に宣伝のようになりますが補足です。
上記記事中では「弁護士法は、法律知識の不十分な者らが介入することで市民の権利が害されるのを防ぐため、弁護士以外が法律事務をする「非弁活動」を禁止している。」とあります。
これは弁護士法72条の規定によりますが、下記の条文をご覧いただけば分かるとおり、「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」となっています。
「他の法律に別段の定めがある場合」に該当するものが、司法書士法第3条で規定されている、認定司法書士の制度です。
簡裁訴訟代理関係業務について法務大臣の認定を受けている司法書士は、簡易裁判所で扱える範囲である訴額140万円以下の手続については、裁判外の和解業務を行うこともできます。
つまり、今回の事件のような敷金返還請求の交渉については、弁護士だけでなく認定司法書士も行うことができるわけです。
第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。